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RYUTA SUZUKI's BLOG

徐冰 Xu Bing 思想与方法 Thought and Method

7月21日より北京の798芸術区UCCAで徐冰(シュー・ビン)の回顧展が始まった。

 
 徐冰といえば、特に有名なのはアルファベットを独自のルールと組み合わせで漢字に見立てる“偽漢字”である。1950年代生まれのという世代と、シミュラクルな作風を氏がどのように発展させてきたのかを示すのが今回の「思想与方法 Thought and Method 」と題された展覧会だ。

 彼は学生時代版画を学んでいた。中国の美術大学では版画の地位は高い。版画は道具や技術の知識や修練の他にも、保存学や化学や光学など技法が網羅する分野は広く、そのことで、ある種“ハードルの高い”表現方法との認識がもっぱらだ。そんな版画を専攻していた徐の初期の作品は中国の伝統でもある活版印刷の活字や、プロレタリで、土着的な雰囲気を醸し出す、素朴でありながら知的な木版画であった。

        
 日本の版画の文脈を参照すると東京国際版画ビエンナーレにおいて版画がコンセプチャル・アートの領域に引っ張られていく時代があった。1979年まで開催されていた日本の現代版画の動向が、徐にどれほどの影響を与えていたのかを示す資料はないが、彼の表現も、初期の木版画から、抽象画を思わせる大きなものへ、さらにはランド・アートのスケールをも感じさせる“ビル拓”版画にまで変貌を遂げていく。日本のかつての現代版画作家たちが版表現の限界を感じていたように、徐の表現もそこから版画を直接用いる表現から次第に離れて行ったようだ。


 版画を用いないにせよ、「思想与方法 Thought and Method 」という展覧会タイトルには、版表現に携わったものなら幾分か意図がわかる雰囲気がある。つまり、版表現はいつも技法の工夫とともに成り立つということ、そして学生時代にそういう技法開発と概念の拡張を同時に考える癖のついた者は、アートを方法論の演算と捉える節があるということだ。



 初期の活版印刷から文字の意味論に立ち返りジャック・デリタ的記号論として“偽漢字”を、または、ゴミをライトボックスに貼り付け表からは美しい山水画に見えるような皮肉も、考えてみればシニフィア(版)とシニフィエ(画)=版画と捉えられよう。しかし、この展覧会でもっとも目に止まったのは偽漢字の展示ブースにて設けられた“偽漢字書道体験コーナー”で、彼のエポックな作品とは対称的に、そこでもなお美しい書を書こうとはげむ来場者の姿であった。中国・北京で徐冰があぶりだしたものは「悪い場所」性だったのかもしれない。

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