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RYUTA SUZUKI's BLOG

広州・深センのアート事情 (第六回広州トリエンナーレ・広州画廊・深センOCT)

北京上海と並び大規模経済都市である広州と深セン。現代の美術は様々な視点で論じられるが、一般に展覧会の催しはアーバン・カルチャーと言っていい。すなわち経済規模が大きい都市ほど展覧会が充実しているのだ。広東地域の中国での立ち位置を捉えようと思えば現代美術における展覧会の充実度を見ることで見えてくる部分も多い。

広州は、北京や上海に比べ美術館数や画廊数は少ない。美術館は広東時代美術館と広東美術館の2つが主だったものだ。また画廊は広州画廊、本来画廊という2つの画廊が関係者の中では話題になるという。美術関連施設が散在する広州に比べ、深センは華橋城という地域にあるOCTという芸術区にアートシーンが凝縮されているらしい。

広東時代美術館(广东时代美术馆)http://www.timesmuseum.org/
美術館ホームページによれば、広東時代美術館は2003年に時代地産という不動産会社と広東美術館の相互協力によりその活動が開始され、第2回広州トリエンナーレなどいくつかの活動を経て、2010年に正式開館した美術館である。地下鉄2号線黄辺駅近くで、広州の中心地からは少し外れた場所に位置する。
展覧会よりもユニークだと感じたのがアパートビルの高層19階部分を全面美術館にしているところだ。一回は受付になっており東京のワタリウム美術館を思い出させるが、19階の展示スペースや、吹き抜けになっているバルコニー部分からはすぐ下の階の日常生活空間が目に入ってくる。例えばロンドンのテート・モダンなど本来は美術館のための建築でなかったものをリノベーションし展示スペースに仕立てる美術館は数多くあるが、これだけ日常空間に寄り添う美術館も珍しいかもしれない。
この時期は阚萱(Kan Xuan)と金小罗(Sora Kim)という女性二人の作家に焦点を当て"A Double Woman Show"と題し、パフォーマンスとビデオインスタレーションからなる展覧会を開催していた。金小罗は2005年の横浜トリエンナーレでも出展している韓国人のアーティストだ。中国でもやはりアメリカやヨーロッパの美術を敬う傾向がある中で、着実な活動を行う韓国人アーティストを引っ張ってくるあたりにキュレーターの芯の強さを感じる。館内は来場者で賑わっていたというわけではなく、やや静かな印象で緊張感漂う良質な展示空間を実現させていた一方、受付がある1階のオープンスペースではMapping Tomorrowというタイトルの新しい展覧会の準備が着々と行われていた。どうやらキッズプログラムも含まれる催しのようで、美術の普及活動につながるイベントになりそうだ。それは、どこの美術館よりも日常生活に近いこの美術館が、大切にしようとしてる信念であろう。


広東美術館(广东美术馆)http://www.gdmoa.org/english/
広州地域で最も重要な美術館の一つである広東美術館では第6回広州トリエンナーレが12月から開催中であった。トリエンナーレを6回積み重ねてきた努力は大変なものであろう。にも関わらず展示内容はバイオアートを取り扱う攻めの構成であった。
「AS WE MAY THINK: FEEDFORWARD 诚如所思:加速的未来」というタイトルからも読み取れるようにテクノロジーの発展、科学至上主義の現代、そしてアーサーCダントーのいうポスト・ヒストリカルな時代にあって巨匠のナラティブが消滅した後の、まだ明らかになっていないアートの新しい地平を探るような意欲的な概念をテーマが掲げられた。
Rynn Hershman(リン・ハーシュマン)のドキュメンテーショナルなインスタレーションに始まり、Tega Brain(テガ・ブレイン)の人工知能が管理する植物と水の循環を視覚化するインスタレーション、さらにはHsienYu Cheng&TingTong Chang(郑先喻&张硕尹)の少しダミアン・ハーストを感じさせる蚊を使ったインスタレーションなどが目を引いた。日本人の私からすると広東地域のベンチャービジネスやテクノロジーのイメージと合わさって、先端アートを意識するその視点こそが同時に、ここの地域性をにじませることになっているように思えた。一つ一つの作品はかなり実験的で旧来の“アート作品としてどうか”という先端メディアアートに投げかけられがちな疑問に、それぞれの作品が十分な答えを持っていたかは分からない。しかし、そのような批評的な疑問もすでにクラシカルな問いであることもこの展覧会によって強調されよう。確かに科学実験アートと解釈できよう作品群は、一つのロゴスを醸し出しているが、それと一対であるとされてきた芸術と情念との関わり、すなわちパトスに関わる”芸術感”は、テクノロジーを開発する側のパトスに対するアプローチの旺盛な熱量とは裏腹に、未だ大きな空洞を残しているように思えた。
 
テクノロジーに関連するニュースを読んでも、今回のような展覧会を目にしても、とりわけ強調されよう概念はやはり人としての情念をテクノロジーがどう乗り越えるのかという疑問だろう。しかし、一方で生身の人間である我々のリアルなはずの感情の動きも、2000年代に入ってからなんとなく不完全燃焼状態が続いており、そもそも尊ぶべきその道徳が、時代が新しくなればなるほどわからなくなっている、それが今の我々ではないだろうか。


広州画廊(Canton Gallery)
さて、広州画廊も広州地域の美術を語る上では貴重な存在だ。2015年に設立されたプライベートギャラリーであり、90年代生まれの若手の作家の展示を開催中だった。北京には草場地という、貧困世帯の居住地の中にアートギャラリーが立ち並ぶ区域が存在するが、広州の海珠区泉塘路という地域にあって、この広州画廊も北京の草場地の画廊と同じようなスタンスなのだろう。こういった若手を積極的に取り扱うギャラリーは、広州地域のアートの生命線とも言える。世界のどの地域であってもアーティストとはだんだん育っていく存在なのだから。


深セン華橋城OCT
深センは広州から高速鉄道で約1時間強という距離だ。深セン自体は中国で最も急激に発展をした都市として有名である。蜂巢当代艺术中心(Hive Center for Contemporary Art)やOCATという北京や上海に同時展開している有名画廊もここにある。日本語を話しかけてくれたギャラリーの受付スタッフもいてとても嬉しく感じた。ここでもインスタレーションとビデオアートの展覧会が目を引いた。
 

広東地域はインフラがとても整っていて、教育水準も高く、気候も温暖である。食文化も点心が有名だ。人当たりは温和で、中国の伝統、広東地域の誇り、そして経済発展からくる自信と活気に満ちた注目すべき地域であると強く思ったと同時に、テクノロジーにフェティッシュな美術の動向が垣間見え、現代における広東地域の地域性を感じることができた。
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